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やきもの✖️たきもの 其の弐

和田直樹
和田直樹

 
【いつも穏やかでいられる理由】
 
高野山のinternational café 梵恩舎に、段ボールに描かれた仏画が飾られておりまして
初めて対面したとき、その絵に衝撃を受けたんですよ。
めっちゃ訴えかけてきてるような、そうでもないような、控えめなのに力強く、でもやっぱり、何か言いたげな感じ。

梵恩舎の奥様が画家なので、画風は全く異なるけど彼女の作品かなと思って訊ねてみたところ
 
梵「あぁ、それは和田くんが描いたんだよ。10年ぐらい前にね」
 
え?和田くんって、陶芸家の和田くんですか?
絵も描くんですか!?

 
彼は子どもの頃から絵を描くことが好きで
大人になってからも描き続け
宿坊で働きながら世界中を旅して芸術に触れ、絵画の勉強のためにパリにも行ったそうです。
 
和「僕がパリとか似合わんって思ったやろ?」
 
佑「想像を絶するわ」

パリ滞在中は、帰省していた梵恩舎夫妻にお世話になったそうで
夫妻から全幅の信頼を寄せられていると推測。

和「実は梵恩舎がオープンしたときから通ってるんよ。居心地えぇんよなぁ」
 

陶芸を始めてから絵はほとんど描いていないそうですが
梵恩舎に飾られている絵がめっちゃ好きなので、絵を描いていた当時のことを訊いてみたところ
 
和「なんか、こう、いっきに描く力が集結?して、5分ぐらいで描いてたんやけど、めっちゃしんどくなってたんや」
 
スピリチュアルな話は苦手らしいけど、それ、何かと繋がって描きおろす系では…。
 
和「絵は我を通せてしまうから、なんかアカンかったんや。やきものは、思うようにいかん、うまくいかん。我を通すどころか、ぶっ壊されるんよ」
 
 
絵は思い通りに描ける。
焼き物は、自然と調和しないと失敗する。

そもそも焼き物に向かない紀伊半島の土を
10年近く研究し、実験し、失敗し続け
それでも懲りずに
自作の窯で、地元の木を薪にして、自然の力で焼き物をつくる。
 

和「土、水、木、火と、人の想いが調和できたら、人が使える焼きもんができるんやと思う。使えんもんができてしもても、それは土にとっての自然な状態やから、それでえぇんよ」
 

我を通そうとすると、はね返される。

「うまくいかん、それでえぇ」
 
みえない自然の法則は、人の心をゆるませる。

受け入れると、自分自身も穏やかでいられる。
 
 



 
【心を大地に戻したい】
「やきものをつくることで、自分自身が整う」
と語る和田直樹の焼きものは
「おかえり〜」
と、家で待っていてくれるような存在かなと思ったんです。
和「たとえば、都会で一人暮らししている人の部屋に、土の素材感とか重さを感じられる焼きもんがひとつ、置いてあったら
焼きもんに触れるたびに、山の空氣とか土の匂いを思い出して、ほっとしてもらえるんとちゃうかなあ」
 
和歌山を離れ大阪で暮らしていたときの経験から、そう考えるようになったそうで
現代アートとして飾られるより、日々の暮らしの中に在って、実際に使ってもらいたいとのこと。
和「手から伝わる素材の感覚は微細なもんでも、心に何かしらの影響を与えとって、それは、思考より先に起こってることやから、焼きもんを言葉で表現したくないんよ。触れることで、土と自然の力を感じてもらいたい」
 
それは、お香も同じなんですよ。
嗅覚は顕在意識を介さず潜在意識に届くので
頭で考えるより先に心が感じとっています。
言葉で理解しなくてもいいと思うんです。
 
でも佑天は
脳科学とか超ひも理論が好きなので
言葉で説明したがります。
ここが、言葉で表現しない芸術家と違うところなのかもしれません。
和「その人のバランスのいい状態に整えられるような、そんな焼きもんをつくりたい」
うんうん、佑天の『心をうつすお香づくり体験』も心を整えるもの。
そのとき必要なお香は、その人自身がちゃんと知ってるんです。
そして
願いは香煙と共に天に届き
天佑となって還ってきます。
そのときに
「おかえり」って迎えてくれる焼きもんが
心を大地に戻したいと願ってつくられた
自然素材そのまんまのお香皿やったら…。
佑「お香は火の力で灰になって大地に還るけど、焼きもんは火の力でずっと存在してられるやん。佑天のお香は、行ってらっしゃい!って鼓舞するもんが多いんやけど、焼きもんは、どっしり構えて、おかえり〜って感じやん?めっちゃえぇやん!」
と、半ば強引にコラボを持ちかけては
和「いやいや、けっこう地味な作業多いし、意外と忙しいんよ…。そんな余裕ないわぁ」
と、苦笑いされて、あしらわれても
めげずに、梵恩舎で待ち伏せし
(ストーカーやな)
佑「うちの地元に枝珊瑚ようけ流れ着いてる海岸あるんやよ。地元民しか知らんのやよ。行きたい?案内するで?」
と、焼きものに使う素材で釣ってみたり(笑)
 
 
和「うーんと、ほんまは土を採るとこから、やってみてほしいんやけどね、めっちゃ楽しいから(笑)でも、時間的にもそこまでできんし、せめて、焼く前の土に触れてみて、好きなように、つくってもらえたらいいなぁ。その方が面白いし、伝わると思うわぁ」
お香のお皿を紀州の素材でつくってもらえたらいいなぁと2年前から妄想していましたが
オーダーは受けていない、というより、同じものはつくれないし、量産もできないので
無責任なことはしたくない、という正直な氣持ちが、ほんまのところなんやと思います。
 
 
3月から始まった
高野町の子どもたちが土を採るところから焼きものをつくる特別企画に、スタッフとして携わり
一連の作業を体験させてもらったのですが…。
とにかく土は重いし、薪も重い
昔ながらの方法で土を精製したり
釉薬に使う石を砕いたり
根氣の要る地味な作業を延々と繰り返すのです。
 
焼くための薪を大量に確保するのも至難の技。
一度の窯焼で、2tトラック山盛りの薪を使うので、1年間に窯焼きできる回数も限られます。
そして
1200℃の熱と向き合うので、多少の火傷は当たり前なのですが
呼吸器官も火傷状態、不眠不休で15時間。
まさしく、命を削られます。
ほんま、変…もとえ、好きじゃないとできません。
それらの工程も知った上で
無理を承知で
「紀州のもんだけでお香皿をつくりたい」
という佑天の野望を、南紀州と東紀州の情報と引き換えに?(笑)
なんとか聞き入れてもらえました!
 
高野と紀州の土でお香皿をつくる体験と
佑天のお香の灰と那智黒を釉薬に使うお香皿
近日中にネットショップでご披露します。
和田直樹